廃棄食品横流し事件から学ぶこと(その2)


今回の食品廃棄物の横流し事件に関して、多くの方からご質問をいただいているのは、処理業者は廃棄物処理法上のどの条文に違反しているのか、また、排出事業者には法的な違反はなかったのかということです。お断りしておきますが、私には捜査権限も報告徴収権限もありませんのでマスコミ報道されている範囲でということをご了解ください。

まず、最も詳しく報道されている「廃棄冷凍カツ」の事件を題材に、今回は排出事業者である壱番屋の処理委託について考えてみましょう。

1 処理委託先の産業廃棄物処理業許可は事業の範囲・取り扱う産業廃棄物の種類ともに足
  りていた。
2 処理委託先施設の現地確認調査は、法では努力規定であるところ愛知県条例で義務付け
  られた年1回は履行されていた。
3 処理委託契約書は作成のうえ保存されていた。
4 処理委託実施時には、電子マニフェストが使用され適正なデータ入力と処理終了確認が
  されていた。
5 「管理票交付状況等報告書」の提出に関しては、電子マニフェストを使用していたために必要がなかった。

ということで、今回の事件で排出事業者である壱番屋が廃棄物処理法違反に問われることはないと判断しています。しかし、廃棄物処理法以前の問題として排出事業者のリスク管理の観点で言えば、食品廃棄物を横流しされても仕方ない形で安易に処理委託していた点は今後の教訓とすべき事項と考えます。

また、一部の報道では本件廃棄物の委託に関して処理料金が通常料金を遥かに下回る低額で設定されていたとの情報があります。結果的に環境保全上の支障を生じる不法投棄でなかったことは幸いでしたが、そのような事件に至ったと仮定すれば、排出事業者には原状回復(投棄物を集め適正処理する)の措置命令が発せられる可能性があったという点で排出事業者に全く非がなかったとは言えないことを付け加えておきます。

前回も書きましたが、排出事業者が処理委託先を決定するときに必要なことは、
(1) 処理業者は排出事業者の身代わりとなって処理を行うという法律の規定ですので、
   自分の身代わりになり得る信頼性を有する処理業者であるかという観点で選定する
   必要があること
(2) 適正な産業廃棄物処理にはそれに見合った処理料金が必要であること。処理料金の
   多寡だけで委託先を決定するやり方は、そのつけが自らに跳ね返ってくるリスクが
   高いこと
をこの事件は教えてくれています。