廃棄物とは何か


2回にわたって「食品廃棄物の横流し事件」に関する話題を取り上げましたが、今回は廃棄物処理法の出発点である廃棄物該当性について考えてみたいと思います。「廃棄物」って何と聞かれたとき、あなたは答えられますか?

イメージとしては頭に浮かぶと思いますが、明確に文章で答えられる方は案外少ないのではないでしょうか。廃棄物処理法は、第2条第1項で、

「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他汚物又は不要物であって、固形状又は液状のものをいう。

と定義していますが、昭和45年の法律制定時の表現を手直ししていないこともあって、非常に解りにくいものとなっています。一方、法律の運用通知では明確に次のように記載しています。

「廃棄物」とは、占有者(排出事業者)の不要物であって、有価売却できない固形状又は液状のもの。

としています。これは法律の書きっぷりに比べれば、すっきりとした表現で、廃棄物であるか否かを判断する際の物差しとなってきました。

ところが、近年廃棄物処理法が制定された昭和45年当時とは廃棄物処理を取り巻く状況が大きく変化してきたことで、廃棄物該当性の判断も難しくなってきています。有名なのは平成11年に最高裁判決が確定した「おから事件」で、豆腐製造業者から排出された「おから」を許可取得することなく収集運搬し、家畜飼料に加工していた者が無許可産業廃棄物処理業を問われたものでした。被告の主張は、「おからは現に食用に供されており、廃棄物には該当しない」というものでしたが、判決は「おからの一部は食用に供されているものの大部分は廃棄物として処理委託されている実態があることや腐敗しやすい性状を有していること、さらには処理料金を徴収していることから廃棄物と判断すべき」というものでした。

これをきっかけとして国(環境省)が通知を発出し廃棄物該当性の基準を示しています。これがいわゆる「総合判断説」と呼ばれるもので、廃棄物であるか否かは、@物の性状A排出の状況B通常の取り扱い状況C取引価値の有無D占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものとしています。おから以外の具体的な事例を用いた解説は次回以降に譲りますが、リサイクル技術の進歩が、意外にも廃棄物該当性の判断を難しくしていることは興味深いことです。