冷凍カツ横流し事件その後


 このコラムの第2回、第3回で冷凍カツ横流し事件の概要と予防策について書かせていただいてから半年余が経過しました。今回はその後の情報として、違反者であるダイコー株式会社及び関係者に対する処分の状況をお伝えしたいと思います。
 まず最初は、行政罰としての廃棄物処理法に基づく不利益処分(行政処分)の発出です。
(1)愛知県の改善命令:平成28年2月29日⇒処理基準に違反して大量に保管されている受入れた産業廃棄物を平成28年5月17日までに撤去すること
(2)岐阜県・三重県の産業廃棄物収集運搬業許可取り消し:平成28年4月16日
⇒取り消し理由:受託した産業廃棄物を、岐阜県・三重県内の倉庫において、許可を得ることなく積替え・保管を行った。(収集運搬業変更許可違反)
(3)愛知県の産業廃棄物収集運搬業・処分業許可取り消し:平成28年6月27日
⇒取り消し理由:2006年ごろから廃棄食品を無許可で破砕処理していた(処分業変更許可違反)
 本拠を置く愛知県の取り消し命令が最後になっていますが、(1)の改善命令を発出し、まず原状回復を優先させるという行政のスタンスは理解できるところです。それでも、(3)の取り消し理由は?と感じるところで、(2)の他県での許可取消し又は(1)の改善命令に対する命令不履行が取り消し理由として最も妥当と考えますが、愛知県のプライドと6月28日に許可期限が到来するという時間の制約が、このような形になったものと推測できます。
 次に、刑事罰についての情報です。
 平成28年7月12日、代表取締役の大西一幸容疑者が食品衛生法違反で逮捕されました。このほか、横流しに関わったみのりフーズの岡田正男容疑者とジャパン総研の木村正敏容疑者が詐欺罪で逮捕されています。いずれの者も逮捕容疑に廃棄物処理法違反は含まれていません。現在の捜査状況は、「食の安全を脅かした」という点で世間の関心がそこに行っているからでしょうか、最高刑が「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はその併科」でしかない食品の無許可営業を問うています。しかし、この事件の出発点が産業廃棄物の処理委託というところにあるわけですから、そこの追及も是非して欲しいと思います。前出(2)(3)の無許可変更に対しては廃棄物処理法上最も重い「5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科」が、(1)の改善命令違反に対しては「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科」と、食品衛生法よりも重い罰が問えるのですから。今後、再逮捕ということも考えられますので、捜査の進展に注目していきたいと思います。