下取り行為について


読者の皆さんは「下取り」という言葉をお聞きになったことがあると思います。代表的な例として、マイカーを購入する際、これまで乗っていた車を「下取りに出す」というような場面が挙げられます。販売店が下取る中古車は、まだ車としての価値がある又は部品取り・古鉄材料として価値があるものと考えられることから、この場合の「下取り」とは、引き取る車の価値を評価し、新車購入価格をどれだけ値引き出来るかの判断材料にするとの意味合いを有しています。

一方、一般消費者向けに大量販売される商品には見かけませんが、工場向けや事業所向けの商品の中には当該商品の販売に際して従来使用していた商品を販売店が無償で引き取るという商習慣が日本には存在しています。ここまで読んだとき「はっ」と気が付かれた方は、これまでの連載コラムの内容を十分に理解していただいていることになります。つまり、従来使用してきたものを廃棄し、かつ有価売却できないものならば、それは廃棄物に該当し、排出者からの引き取りには廃棄物処理法に基づく収集運搬業許可が必要であって、「下取り行為」をした販売店は法律違反を問われることになってしまうという点です。

でも、ご安心ください。国もその辺りの商習慣のことは十分承知していて、次のような通知を発出し、収集運搬業許可を得ることなく「下取り行為」を行うことを認めています。

平成12年9月29日 厚生省産業廃棄物対策室長通知

新しい製品を販売する際に商習慣として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業許可は不要であること。


私の経験では、この通知を読んだ人が自分勝手な拡大解釈をして法律違反を問われたというケースもありましたので、以下の点には十分ご注意ください。

1 無償で引き取る:販売商品の価格以外に料金請求しない。見積書や請求書の内訳に「下取り料」、「処理料金」等の記載があるものは無償引き取りには該当しない。
2 同種の製品:基本的には同じ目的・機能を有する廃棄商品の引き取りと考えて下さい。拡大解釈できる範囲は、電気式の紙シュレッダーを販売した際、手動式の紙裁断機を引き取るという程度が限界でしょう。また、下取りできるものは、自らが販売したものに限定されることはありませんが、販売個数を上回る個数の引き取りはできないことを承知おき下さい。
3 収集運搬する:下取りしたものを販売店が自らの車両で運搬するケースに限定しています。よって、販売店以外の配送業者が運搬する行為はこの通知の適用は受けられません。

蛇足ですが、下取りされた廃棄商品は販売店が排出者となり産業廃棄物処理委託基準に従って適正に処理を行う必要があります。言い換えれば、「下取り行為」と認められる場合は、当該物を使用していたユーザーには契約書締結や管理票交付の義務規定は課されないことになります。

以上の通り、この通知は製品ユーザーにとっては有利な取り扱いですが、販売店からはユーザーから下取りを強要されて困っているという話しをお聞きしたこともありました。「下取り行為」は、従来から存在する商習慣を認めるための特例であって、廃棄物処理法上の大原則であるユーザーの排出事業者責任は忘れて欲しくないものです