第10回  「するな飲酒運転」


赤穂浪士四十七士のひとり堀部安兵衛。元々は越後の浪人、中山安兵衛ですが、この安兵衛といえば「高田馬場の果し合い」で知られた:剣客です。叔父の菅野六左衛門の助太刀のため決闘場に駆けつけているのであります。敵は村上兄弟。安兵衛の留守宅に菅野六左衛門からの「助太刀お願い」の置手紙。この手紙を見た安兵衛、「関の孫六」を引っさげて駆け出し、途中の居酒屋で升酒を一息で飲み干し、目指す決闘場の高田馬場に韋駄天走りで駆け付けているのであります。駆けつけた時には、果し合いの真っ最中。安兵衛は村上兄弟一派をバッタバッタと斬り倒し・・・と、これは浪曲での話でありますが、この浪曲の中では斬った敵は16人といっていますが、実際には安兵衛が飲酒していたか否かは定かではなく、また、斬った敵も4人位ではないかと言われています。

それはともかくとして、「安兵衛が升酒をあおって決闘場の高田馬場に韋駄天走りで駆け付けている」これで果たして勝負ができるのか、これが現実に可能か否か、大学の先生がその実験を試みたという記事が10数年前の新聞のコラム欄に掲載されていました。

安兵衛役には剣道の達人、一方相手役には東大の剣道部員5人。勝負の方法は一対一。まず達人がしらふでそれぞれ5人と勝負。その結果は、達人が一方的に勝利しているといいます。しかし、達人が酒を飲んでからの勝負は全ての対戦で達人が敗北しているという実験結果だったそうです。

安兵衛の「高田馬場の決闘」はあくまでも浪曲の中での話でありますが、腕が一流であっても酒に酔えば、その腕はただの人以下ということになります。「車の運転には絶対自信がある」「ちょっとくらい酒が入っても大丈夫」などと思っている人がいるかもしれませんが、しかし、運転の達人であっても酒に酔ってしまえば腕が狂うのは当たり前のことです。その場合、運転に自信があるだけに余計たちが悪い訳であります。これが大事故につながるということは言うまでもありません。飲酒運転は犯罪です。交通事故にも直結し、飲酒運転が家族をも巻き込み不幸な結果を招くことになるということを忘れてはなりません。