廃棄物処理法はどう変わったか(その2:排出事業者責任の強化T)


前々回までに廃棄物処理法は重なる改正が行われたてきたことやその背景についてお伝えし、前回は繰り返された改正の結果、法律の中身がどのように変化してきたかという視点で、第1回として罰則の変遷を書きました。今回は、第2回目として、産業廃棄物処理の大原則である「排出事業者責任」について見てみたいと思います。

法律第11条第1項では、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」と規定していますが、事業者自らの手で処理を完遂することは難しい=ほぼ無理というのが現実です。そこで登場するのが、許可業者であり、事業者の身代わりとして「処理委託」という形で排出事業者責任を全うする法律体系であることは、このコラムの第2回目でお伝えしたとおりです。

ところが、排出事業者にとって廃棄物とは正に不要物で価値を生まないものであり、さらにその処理委託に費用が掛かるという現実が重荷となり、不法投棄や料金の安い不適正処理に走るケースが後を絶ちませんでした。また、そこまでの意識はなくても、結果として委託先で問題が生じる事例も多数見受けられました。

そのような状況を改善するために法律改正が行われ、数次にわたり「委託基準」の強化が行われてきました。制定当初の委託基準は許可業者への委託を規定する程度でしたが、平成3年の法律改正で「特別管理産業廃棄物」の区分が新設されたのを機に、当該物の委託に際して管理票(通称マニフェスト伝票)の使用が義務付けられることになりました。同時に特別菅産業廃棄物の処理委託に際しては、その性状や取り扱い注意事項等を記載した書面を処理委託業者に交付しなければならないことが規定されました。さらに、平成9年には管理票交付対象物が普通物にまで拡大され現在に至っていますが、その間にも7枚目の伝票としてE票が追加されたり、虚偽記載禁止や5年間の保存義務規定が追加されました。管理票に関する規定の変遷は他にもまだまだ存在しますので、別の機会に書かせていただければと思います。

また、排出事業者責任に関して法の考え方が大きく変更になった点があります。それは排出事業者責任は、どこまでの範囲かという点です。平成12年まではその範囲は、排出事業者が最初に委託した許可業者の手によって処分完了するまで、つまり1次マニフェストのD票が返却されるまでという規定でした。ですから、中間処分後の廃棄物は処分業者のものであり、排出事業者の責任は及ばないというものでした。それが、この時の改正により、最終処分完了(ここでいう最終処分とは、再生利用又は埋立処分完了を指します。)するまで範囲が拡大されました。その結果、管理票にE票が追加され、契約書作成でも最終処分に関する事項が必須項目になり、その後新設された「現地確認調査の実施」に関しても、最終処分が終了するまでの一連の処理の行程確認が努力義務として規定されたことに繋がっているのです。

排出事業者責任の強化の変遷については、まだまだ書き切れませんので、次回引き続き書かせていただきます。