皆さま、こんにちは！今週末からは夏季休暇の方も多いでしょう。かく言う私もそう。何処に行こうとか、何を楽しもうとかいう余暇的な目的の他に、今年の夏休みはある事をやろうと目論んでいます。それは何かといえばスマホのない１日。題して「スマホを捨てよ、町へ出よう」。まあ「町へ」というのは一つの象徴的表現。私の場合、海の波間に揺られたり、林間を単車で駆けたりと、町とは正反対に行くのは間違いありません。スマホの電源を切り、家に置き去りにして、少なくとも一昼夜以上の時間を過ごしたいと考えています。

ところで、「スマホを捨てよ、町へ出よう」なんて言ってもピンとくる方は今や少数派でしょう。学生運動が盛んなりし６０年代末、詩人・劇作家としてカリスマ的存在であった寺山修司が残した数多く言葉の中で最も有名な「書を捨てよ、町へ出よう」という警句のパクりです。「書物から学ぶ学問なんか捨てて、幅広く社会の実相を見よう」という彼の呼び掛けは、全共闘世代（なんていうのも死語か）の若者の心に強く響いたと聞きます。同名の代表的著書があり、私も二度手に取っていますが、根はインテリの無頼気取りに感じて寺山修司はどうも苦手・・。二度とも途中で放り出したものです。

そもそも、この言葉は寺山修司独特の比喩的表現であり、額面通り「読書無用論」や「半書物」のスローガンと受け取ってはいけません。実際、寺山は猛烈な読書家であり続け、書を捨てる前に多くの書を読み先人の知識と知恵を学ぶことが不可欠だという信条と、捨てるべき本を持たない若者に対するアイロニーが隠されているのです。ましてや娯楽も価値観も多様化し、当時より若者が本を読まなくなったと云われる今の世です。ネット上の情報を盲目的に信じ、調べ事も全てネットで済ませるイマドキの世代を見たら、寺山はきっと「ネットを捨てよ、図書館に行こう」なんて言うのではないでしょうか。

いきなり話が脱線しました。いまさら寺山修司はいいとして、私が思うこと。スマホを携帯するようになってから、自分がいるはずの「いま」「ここ」から離れてしまっていることが増えた。それは私以外の多くの人も同様でしょう。誰かと一緒に居ながら、そこに居ないスマホの向こう側の誰かとつながっている。電車に乗るのと同時に全員が一斉にスマホの画面に食い入り始める高校生たち。あの異様な光景を思い浮かべれば！「書を捨てよ」なんて時代が変わりました。むしろ「書を持て」という方がふさわしい時代です。

今ここにいることを、楽しんでも、苦しんでも、味わってもいない時がある。今ここを留守にしているのだから当然です。一人であっても、一人ではなく。誰かと一緒であっても、そこには居ない別の誰かの存在を追いかけている。LINE？いいね？・・どうでもよろしい。自分が自分から、あるいはここから遊離してしまっている感覚。時間が細切れになり、人生も細切れになり、薄っぺらになる

そんな生活、もうお腹一杯です。ということで、この夏休み、私はスマホの電源を２～３日切って過ごしたいと考えています。私はどこかの誰かとスマホの画面でつながるのではなく、今という時間にどっぷりつかり、今いる場所にどっぷりつかり、人生にどっぷりつかる。スマホ片手に薄っぺらなコピペ情報に浸かるより、その方がよほど濃密な時間の過ごし方でしょう。ということで、「アイツにLINE送ったのに返事が無い！！」なんて怒らないで下さいね。未読か既読かなんてミミっちいことでイラつくより、手紙を書いて送ったと思えばいいのです。そうすれば１週間や１０日くらい待てるでしょ！？

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