ゼロサムゲーム

今朝の新聞は基準地価の話題。

どこが上がった下がったという個別のハナシはさておき。くまなく全体でみれば、全ての地価の上がった下がったの総和は、良くてゼロ・サムになると考えます。何処ぞのリゾート地や首都圏のタワーマンションを外国人が買っているとか投機的な動きを加味しても。価値の付くごく一部の土地と、価値の付かないその他多くの土地と。

「地方の地価回復続く」と記事の見出しにありますが、それは流通に適した比較的条件の良い基準値に於ける話であって、人口減少・空洞化により総体的には地方では逆に土地は余っていることを実感しています。現在の求人倍率が景気のバロメーター足り得ないのと同様、地価上昇もかつてのように景気の過熱を表すものではありません。

 

ゼロ・サムということで・・

著名なレスター・C・サロー「ゼロ・サム社会(解決編)」。読んだのは20年ほど前。論旨は・・全く覚えていません!いまさら再読する気も全くありません!銀行に就職し、ちょうどバブルの後始末の真っ只中の頃。右肩上がりという神話崩壊を実感する中で、サロー教授が提唱する「ゼロ・サム」という概念が沁み込んだことだけはよく覚えています。

レスター・サロー教授に関して記憶にある言葉。

「知的産業に従事する人は、新たなサービスを提供するための新たな知識を吸収していかない限り、価値は下がり続け、当然、賃金も下がっていく」

この本を読んだのと近い、まだ若手と呼ばれる時期。ある人から仕事に取り組む上での警句的に教えられました。当時二十代の私には響きましたね。それから20年を経て、AI(人工知能)の台頭に象徴されるように、知的産業に関わらずあらゆる仕事が機械に取って代わられる時代はすぐそこに来ています。サロー教授の言葉を超えた意味で。

同じく今朝の日経新聞には「三菱UFJフィナンシャル・グループは今後7年間で事務作業の自動化やデジタル化により国内従業員の約30%に相当する9500人分の労働量の削減を実現する」という記事が出ていた。その結果、「比較的単純な作業に従事してきた」「浮く人材」を「よりクリエーティブな仕事に振り分け」「生産性を高めたい」と件のトップは言うが、人間そう簡単に変わるとは思えません。

 

最近、あるプラントメーカーの方と話す機会があり、「廃棄物の選別ラインの作業をAIにより自動化する検討を進めている」と言っていたのが興味深かった。素人が想像するに、実用化には時間が掛かりそうですが・・。労働集約型の典型であり、良い意味でローテク産業の最たるものである産業廃棄物処理の世界もAIという言葉が出るとは。

産廃会社特有の仕事であり、AIに真っ先に馴染みそうなのはマニフェスト(産業廃棄物管理票)の事務処理でしょう。社内にはマニフェスト処理に主に従事する社員が十数人いて、事務作業の中でも大きなウエートを占めるうえに難儀している仕事。AIに労働基準法は関係ありません。24時間365日ぶっ通しで処理すれば・・、如何なる合理化が生まれるのか。

AI?真剣に研究する価値はあるのかも。他人事ではなく。